こんにちは!
今回は、月組別箱公演『出島小宇宙戦争』の感想を書いていきたいと思います。
こちらの公演は鳳月杏さんが主演として初東上を果たしたということで、大変なチケット難になっていましたね…。
また新型肺炎感染拡大の影響により、2020年2月29日からの公演が中止になったことで、3月1日であった千秋楽が2月29日に変更になってしまいました。
以上のことから大変プレミアチケットと化してしまったこの公演、幸運ながら観劇させて頂きましたので…この記事で少しでも公演の面白さが伝われば嬉しいです…!
「出島小宇宙戦争」の感想
デジタル・マジカル・ミュージカル 『出島小宇宙戦争』
作・演出/谷 貴矢
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2020年2月8日(土)~ 2月16日(日)
東京建物Brillia HALL (豊島区芸術文化劇場)
2020年2月24日(月)~ 3月1日(日)
(引用:公式ホームページ)
公演発表の時から、デジタルマジカルミュージカル…?とファンがざわざわしていましたが公式のあらすじを見るとこのような感じです。
長崎の出島に、外国人に紛れ宇宙人が忍び込んでいる-。昨今の江戸の町では、そんな噂がまことしやかに飛び交っていた。事態を無視できなくなった幕府は、宇宙のことに誰よりも詳しい天文方、カゲヤスに潜入調査を命じる。
樺太を探検し未知の文化との交流経験を持つ御庭番、リンゾウを伴って九州に乗り込んだカゲヤスであったが、そこで待っていたのは驚くべき光景であった。長崎全体が、奇妙な幻想未来都市へと変貌を遂げていたのである。出島で出会った女、タキの協力を得て調査を進めるカゲヤスは、この近代技術をもたらしたという謎の西洋人、シーボルトの正体を探っていく…。
誰が宇宙人で、誰がそうでないのか。何がリアルで、何がそうでないのか。混乱の中でカゲヤスは、ミクロでマクロなスペースオペラに巻き込まれていく。パラレルワールドの出島を舞台にコメディタッチで描く、デジタル・マジカル・ミュージカル。
あらすじを読んでも謎が謎を呼ぶ…といった感じですよね。
私は公式ページだけ読み、観劇に臨んだのですが、正直、このあらすじからは物語のほんの一部しか分からないです!それくらい盛り沢山の公演でした。
SFあり、恋愛あり、アクションありでしたが何より衝撃だったのがその世界観。
作品に登場するキャラクターたちのビジュアルがかなり奇抜で、作中にも「文明開化」の場面がありますが、様々な文化を楽しめる、そんな感覚になりました。
ファッションショー的な楽しみ方も出来るかなと思います。
肝心な物語の感想ですが、私の見解として「宝塚版『シーボルト事件』」を描きたかったのだろうと解釈しました。
文政11年9月、オランダ商館付の医師であるシーボルトが帰国する直前、所持品の中に国外に持ち出すことが禁じられていた日本地図などが見つかり、それを贈った幕府天文方・書物奉行の高橋景保ほか十数名が処分され、景保は獄死した。当時、この事件は間宮林蔵の密告によるものと信じられた。
樺太東岸の資料を求めていた景保にシーボルトがクルーゼンシュテルンの『世界周航記』などを贈り、その代わりに、景保が伊能忠敬の『大日本沿海輿地全図』の縮図をシーボルトに贈った。この縮図をシーボルトが国外に持ち出そうとした。
(引用:Wikipedia)
この事件がそもそもめちゃくちゃロマンに溢れているなと感じるのですが(この公演の演出を務めた谷貴矢先生もプログラムでそう仰っていました)、事件の概要を知っているとより作品を楽しめると思います!
「出島小宇宙戦争」では、カゲヤス(高橋景保)とタダタカ(伊能忠敬)、そしてリンゾウ(間宮林蔵)の関係性にエッセンスを足し、ロマンス要素とファンタジー要素を加えることで「宝塚らしさ」を追及していたなと思います。
また、月組公演であり、組替えで月組へ帰ってらした鳳月杏さんの主演公演とのことで「月」に因んだストーリー展開であったことも素敵でした。
「月の植物」があそこまで物語において重要な役割を果たすとは…良い意味で裏切られ、楽しかったです。
キャラクターの過去の描写もしっかりあり、それぞれの人物がキャラ立ちしていたのも物語をより面白くしていたと思います!
ここまで良い点について書かせて頂きましたが、ここからは少し気になった点を挙げます。
先程物語にファンタジー要素があったと書きましたが、どこまでがファンタジーなのか分かりにくかったように思いました。
パラレルワールドの出島が舞台ということで設定が複雑化しており、
「結局誰が宇宙人なのか?」
「本物の宇宙人なのか、それとも何かのメタファーなのか?」
など観ていく中で疑問に感じたまま進んでしまい集中しきれない場面がありました。
他に観た方とお話しして思うのが、この物語に関しては、考えすぎると良くないのかなと思います。
しかし、設定が面白いので欲を言えば考察しても面白い話になっていればなぁ…と思ってしまいました。
ビジュアルが派手な点も活かしきれていないと感じる部分があり、見掛け倒しだと感じてしまうのが非常に勿体ないなと思います。
また、全体を通してコメディとシリアスのバランスが悪かったように思います。
そもそもこの作品、観る前は完全なコメディだと思っていました。
しかし観始めるとシリアスなテーマを扱っていることに気が付き、そっちの方にシフトを切り替えるべきか…?と思ってもシリアスな場面中のセリフで笑いを取っていたり、明らか設定がボケてるな…?と感じる瞬間があったりと、感情が忙しかったです。
結論、最後まで観劇しても、やはり「出島小宇宙戦争」はコメディではないと思います!
「出島小宇宙戦争」キャスト
次に、主要キャストの方の感想を書かせていただきます!
さすがに芸達者なジェンヌさんが集っている月組。
そして「月」と関係の深い作品を扱うことの多い月組…
この作品の世界観に溶け込み、自分たちのモノにしていて感動しました!
鳳月 杏さん:カゲヤス
その存在だけで語れることが出来るのが鳳月杏さんの凄い点で、とにかく立っているだけでカッコイイんですよね。
月組、そして花組に異動されてからも様々な経験を積み、待望の東上公演ということからオーラだけで周りを圧倒していました。
もちろん存在感だけではなく実力も素晴らしく、重い過去を背負いながらもどこか余裕があり隙を見せない大人の男性、という役が非常に似合っておりました。
今までの「動」な役とは打って変わり「静」の部分が前面に出ていましたので少し物足りなさはありましたが、それは主演ならではの贅沢な悩みかなとも思います。
セリフだけではなく、歌や踊りからも包容力を感じる役作りが素晴らしかったです。
海乃 美月さん:タキ/カグヤ
この役も、様々な役で経験を重ねている海野美月さんだからこそ魅力的に演じることが出来たのだと思います。
大人びた面と少女のような面、また男勝りな面や人間離れした面など、とにかく様々な表情が必要な役だなと思いましたが、海野美月さん自身の魅力と重なる点が多く、はまり役であったと思います。
複数の男性を虜にする、という設定に説得力を持たせられるのが凄いですよね。
暁 千星さん:リンゾウ
前回の対劇場公演「I an from Australia」で男らしい役を演じ切り話題となった暁千星さんですが、この公演でも、鳳月杏さんの幼馴染兼兄貴分のような荒々しい役を見事に演じておられました。
物語中苦悩する場面が多かったと思いますが、心中を歌やセリフに乗せて表現する様がとても素晴らしかったです。
光月るうさん:タダタカ
私の中では、一番のキーパーソンではないかと思うタダタカを演じられた光月るうさん。
月組組長として組子の方を見守る光月るうさんのお姿と、タダタカという役が重なる部分があり、観ていて辛くなる展開でも、観客がどこか温かい気持ちになれたのは光月るうさんのお力かなと思います。
風間柚乃さん:シーボルト
ビジュアルのインパクトNo.1であったシーボルトを演じられた風間柚乃さん。
ビジュアルだけではなく、言動や佇まいから滲み出る曲者感を感じられるのは風間柚乃さんの実力でしょう。
8期も上級生である鳳月杏さんと対等にお芝居していても違和感が無いことに驚きましたし、実力と華を兼ね備えた貴重な若手男役さんであると思います。
「出島小宇宙戦争」のネットの反応
最後に、各メディアが「出島小宇宙戦争」に対して劇評を書いていましたのでまとめさせて頂きました!
タイトルやポスターの画像ではどんな作品か、まったく想像がつかなかったこの『出島小宇宙戦争』。
奇想天外なドタバタコメディかと思えば、意外や意外(?)
ロマンチックもたっぷり味わえるお話でした。
(引用:朝日新聞デジタル)
鳳月も「私が演じる天文方のカゲヤスが『不思議の国のアリス』みたいに、別世界に紛れ込んだ感じ。いままでの宝塚にはない、少年アニメのようなアドベンチャーで、わくわく感がある」と語る。
~中略~
「出島-」は奇想天外な物語だけに、ともすれば空中分解しかねない難しさを持つ。だが鳳月が真ん中にしっかりと立っていることで、ヒロインのタキ役の海乃美月(うみの・みつき)をはじめ、カゲヤスの幼馴染のリンゾウ役の暁千星(あかつき・ちせい)や、シーボルト役の風間柚乃(かざま・ゆの)らの若手スターも自由に伸び伸びと演じ、コメディながらハートフルな作品に仕上がった。
(引用:デイリースポーツ)
日本のようで日本ではない架空の星を舞台に、カゲヤスが隠し持っている師匠タダタカの地図をめぐり、過去と現在、様々な世界の人々が交錯するパラレルワールドだ。
~中略~
後半になるにつれて二転三転する物語の緊迫感に浸った後は、男役・娘役のスタイリッシュかつエレガントな魅力を凝縮したようなフィナーレが用意されている。
特に鳳月のダンス技が映える構成で、海乃をダイナミックにリフトするデュエットダンス、指先まで美しく決まる黒燕尾の男役群舞に目を奪われる。
(引用:yahoo!ニュース)
ここまで月組公演「出島小宇宙戦争」の感想を書かせていただきました。
メディアの劇評にもあったように、この作品のフィナーレは本当に素晴らしく、観ながら感動してしまいました!
今回は本編に焦点を当てた感想にさせて頂きましたが、フィナーレ含めての公演であると思っておりますので、是非今後作品をご覧になる際にはフィナーレにも注目してみて下さい!
DVD発売などのニュースはまだありませんが、CSの「タカラヅカスカイステージ」での放送はあると思いますので、その放送を楽しみにしたいと思います!
最後まで読んでくださりありがとうございました!